出生前診断を受けるか受けないか迷ったときには

コラム

出生前診断が2018年3月からは一般診療として行うことが正式に決定されました。まだ保険適応にはなっていないので費用が20万円ほどかかりますが、どうしようかと迷う所でしょう。  そもそも、この検査で何がどのようにわかるのか、メリットやデメリットはどういうものがあるのかがよく分からない、という人が大半です。まずはこれらを理解することが先決です。

どれくらいの人が出生前診断を受けているの?

日本人の特徴の一つに「みんながやるのなら、やっておこう」という傾向がありますが、出生前診断の場合はどれくらいの人が受けているのでしょうか。  イギリスでは2004年以降、すべての妊婦が出生前診断を受けるように求められていて、アメリカでは約60%です。しかし日本では2%程度だというデータが届いています。  半分か3分の1程の人が受けているだろうと思っている人が多いようですが、実際には非常に少ないというのが現状です。  「みんなが受けているのなら」といった考えの人であれば、2%と言う数字は、「ほとんどの人が受けていなかったんだ」と、かなり驚く数字かと思います。  この検査を受けることが出来るのは妊娠10週から22週までなので、検討中に22週が過ぎてしまうというケースもあるのでしょう。また、費用が20万円ほど必要だということも大きなネックとなっているようです。  そして、どれくらいの割合で異常が見つかるのかということも気になる点だと思います。  関西の某大学病院では年間400人程がこの検査を受けていますが、そのうちダウン症と診断が確定したのは6人です。

3つの染色体異常を検査できる

出生前診断を検討する際に、絶対に覚えておいて欲しいことがあります。それは、何がどのようにわかる検査なのかということです。  この検査でわかる染色体異常は、ダウン症と13番トリソミーと呼ばれるパトー症候群と18番トリソミーのエドワーズ症候群のみです。  この世には星の数ほど多くの病気があります。そのうち、出生前診断で判明するのはこれらの3つのみという言う事を、しっかりと認識しておいてください。この3つ以外の染色体異常はわかりません。  手足の指の本数が5本ずつかどうかや、心臓の弁の数などは超音波で分かります。  しかし、異常なしイコール「正常な赤ちゃん、健康な赤ちゃんが生まれてくる」ということではありません。この点を勘違いしないように、注意してください。  そして、陽性的中率は75~95%、陰性的中率は99%と言われています。どんな検査でも、100%の検査と言うものは残念ながら存在しません。出生前診断も同様で、100%ではないということもしっかりと認識しておきたいものです。  先天性異常のある赤ちゃんは、100人に3~5人くらいの頻度で生まれてきます。染色体異常症は、新生児の約0.6%で確認されると推計されています。新生児の染色体異常のおよそ3分の2が、上記の3つの疾患です。

ダウン症児が生まれる確率はどれくらいなのか

ダウン症の子どもを見たことがあるという人は、結構おられるでしょう。小学校6学年に、1人や2人はいると思います。  ダウン症児が生まれてくる確率は20歳代では1,000分の1ですが、35歳になると300分の1となり、40歳では90分の1、45歳ともなれば20分の1にまでリスクが高くなってきます。  出生前診断を受けることが出来るのは35歳以上となっているのも、高齢出産になればなるほどリスクが高くなるからです。  では、この検査で陽性だった場合は、100%の割合や高い割合でダウン症やそのほかの染色体異常を持った子どもが生まれてくるのでしょうか。  実は、出生前診断で陽性という結果が出ても、この段階では確定ではないのです。この段階では、40%くらいの確率でダウン症や上記の染色体異常の可能性がありますが、まだ診断確定ではありません。  その後、羊水検査を受けるようにと勧められて、羊水検査で診断確定となります。  出生前診断で陽性であっても羊水検査では陰性で、無事に健康な赤ちゃんを出産したというケースもあります。  羊水検査は、300人分の1の割合で流産のリスクがあると言われている検査なので、このリスクもきちんと認識しておきたいものです。

もしも陽性だったら、どうすればいいのだろう

年間400人ほどの妊婦さんが出生前診断を受けている某大学病院では、6人がダウン症だと分かりました。 このように、お腹にいる赤ちゃんがダウン症などの染色体異常があると分かった場合、どのように対応しているのでしょうか。 この病院の場合は、認定遺伝カウンセラーが常勤していて相談に乗ったり、実際にダウン症児を育てている親を紹介するという独自の取り組みも行っています。しかし6人のうち5人が中絶という選択肢を選びました。 この病院の婦人科医は、「障碍があっても無くても産むと決めている人は、そもそもこの検査は受けない」、「陽性なら中絶する陰性なら産むという、マルかバツかで判断している」、「認定遺伝カウンセラーはいるものの、最初から陽性なら中絶と決めて検査を受ける人も多いので、カウンセラーの話を聴く耳を持っていない」と語っています。 また、陽性という結果が出た妊婦さんが知りたいのは、障碍を持っている子の子育ては何が大変なのか、自分に育てられるのだろうか等、どのような生活になるのだろうかということですが、実際のカウンセリングでは医学的な事の説明となっているのが現状です。 そこで、このようなニーズに応えるために、実際にダウン症児を育てている親を紹介するという取り組みを行っているのです。万が一、ダウン症だと分かった場合は夫婦だけで考えるのではなく、実際にダウン症児を育てている親に会うことをお勧めします。

どうするのか検討する時間が限られている

そして、もう一つ認識しておいて欲しいことがあります。それは、中絶できるのは妊娠21週6日までだということです。  出生前診断を受けることが出来るのは、妊娠10~22週の妊婦さんです。もしもこの検査で陽性だった場合は、その後に羊水検査を受けなければ診断が確定しません。陽性だと分かってから1週間後や2週間後に羊水検査と言うケースも多く、この結果が出るまでにまた1週間~2週間ほどかかります。この間にも時間はどんどん過ぎて行きます。  18週で出生前診断を受けると、すべての結果が出るのは中絶が可能な21週6日を過ぎているというケースもあるのです。  10週で受けたとしても、診断が確定するのは14週~18週頃になってしまうので、考える時間は2か月ほどしかありません。  このことを踏まえて考えると、この検査を検討するのであれば早い時期から考えた方が良いのではないでしょうか。  「みんなが受けるのなら私たちもやっておこうか」ではなく、どのような目的で検査を受けるのかをしっかりと検討して、既述した認識しておきたい事やリスクもしっかりと理解したうえで検討してください。

ダウン症についても正しく理解しておきましょう

そして、ダウン症についてもこの機会に正しく理解しておきたいものです。まだまだ偏見や間違った知識を持っている人が多いです。  ダウン症児は30歳くらいまでしか生きられない、と思っている人もいるようですが、今は60歳くらいまで寿命も延びていて、一般人と同様の生活を送っている人も大勢います。大学に通っている子もいるのです。  病気というよりも、生まれながらの特性だと捉えている親御さんが多いです。発達に凸凹はなく全般的な遅れなので、人なつっこく明るい子が多く、学校でいじめを受けることも少ないです。  ダウン症の子どもを持った親が良く言うセリフに、「この子のお陰で新しい価値観や新しい世界を教えられた」、「特別な子どもではない、健常児と同様に苦労したり笑ったり泣いたりしています」などがあります。  また、人気の医療ドラマ「コウノドリ」では、「ダウン症の子どもを持つというのは、アメリカに離陸するはずの飛行機がオランダに離陸してしまったようなもの」と語っています。予想外ではあるけど、オランダは戦地ではないし暑さや寒さが厳しい国でもなく、穏やかな国だという意味です。  日本ダウン症協会では、「最終的には親の意向で検査を検討すべきだ。スクリーニングには使って欲しくない」と述べています。  この検査に何を求めたいのかを、よく検討してください。