新型出生前診断(NIPT)の結果からよくある家族の葛藤とは

コラム

高齢出産や晩婚化のため、近年NIPTを受診する人が増えています。事前にダウン症などの障害や病気などを把握することができますが、結果によっては家族の中でトラブルが起こることも少なからずあります。パートナーとは出産することを決めていたとしても、お互いの親から反対されたため出産すべきかどうか葛藤し、悩んでいる人もいるでしょう。

10週~22週までに利用することができます

日本では近年NIPTを受ける人の数が増えています。イギリスの場合2004年以降すべての妊婦がNIPTを利用するよう求められていて、アメリカの場合は約60%の人が利用しています。しかし日本ではまだ2%というデータがあり、半分か3分の1の人が受けているのではとイメージしている人も多いですが、実際非常に少ないのが現状です。受診するのにいくつか条件が設定されていて、この検査を受診できる人は妊娠10週~22週までになり、検討している間に22週目が過ぎてしまったという人も中にはいるでしょう。自由診療扱いになるので費用が20万円ほど必要になるのも、ハードルが高くなっている要因の一つだと思われます。どれくらいの割合で何かしらの異常が見つかるのかについて気になる点ですが、関西の某大学病院において年間400人程が検査を受けていますが、ダウン症と判断が確定したのは6人と言われています。最初は血液を採取するだけの検査になるので気軽に受けることができますが、結果次第では家族でいろいろな葛藤を抱えるかもしれません。

陽性だとしても確定ではありません

ダウン症の子供は小学校において1人や2人いることがあり、ダウン症児が生まれる確率は20歳代の場合1,250分の1で、35歳になると385分の1になります。40歳の場合は106分の1になり、45歳になると30分の1というリスクです。高齢出産になるほどリスクが高くなるというデータがあります。検査で陽性だった場合、100%の割合でダウン症やその他の病気を持った子供が生まれてくるのだろうかと心配している人もいるでしょう。出生前診断によって陽性という結果が出たとして、この段階では確定ではありません。この段階において40%の確率でダウン症や他の染色体異常といった可能性がありますが、診断を確定するものではないのです。その後羊水検査などを受けるように医師からすすめられたり、羊水検査によって診断を確定することとなります。NIPTでは陽性であっても羊水検査で陰性というケースもあり、無事に赤ちゃんを出産したケースも多いです。尚、羊水検査は300分の1の人に流産のリスクがあるとなっているので、リスクについても認識しておきましょう。

遺伝カウンセラーが常勤している病院があります

関西の某大学病院において年間400人の妊婦が出生前診断を受けていて、6人がダウン症だと判明しました。もしお腹にいる胎児がダウン症といった染色体異常があると判明した場合、どのような対応をすればよいのか悩んでいる人もいるでしょう。この大学病院の場合、認定遺伝カウンセラーなどが常勤しているので気軽に相談することができたり、ダウン症児を育てている保護者を紹介するなど独自の取り組みを行っています。ダウン症だと判明した6人の内5人が中絶するという選択肢を選んでいて、この大学病院の婦人科医は障害があってもなくても出産すると決めている人はこの検査は受けないと言っています。陽性なら中絶し、陰性なら産むという判断で最初から決めて受診する人がいるので、カウンセラーの意見を反映しないということもあるそうです。陽性の結果が出た妊婦が知りたいこととして、障害を持つ子の子育てはどう大変なのかや、自分に育てられるのかなどがあげられます。パートナーと一緒にカウンセリングを受ける人もいて、実際ダウン症児を育てている保護者に会うような機会をこの大学病院では提供しています。

葛藤したり心変わりすることもあります

もし子供に障害があった場合、出産することをパートナーと話し合っていても、NIPTで確定診断がつき病気や障害などの事実に直面すると葛藤したり心変わりするケースもあるでしょう。パートナー同士では話に決着がついていても、それぞれ親に打ち明けると妊娠の継続に反対される場合があります。親の反対にあって妊娠中絶になってしまったというケースも珍しくありません。病気や障害などのリスクが高いという診断が下された場合、どちらかというと中絶を選択する方が多いという結果があります。法律上、子の病気や障害などを理由にして中絶することは基本的に認められていません。経済上の理由から中絶が行われることはあるようです。日本社会が障害者にとって暮らしやすいかと考慮すると、疑問符がつくこともあります。療育を受けることができますが時間や手間がかかったり、近所に養護学校が見つかるとは限りません。仕事を継続することができるのかという心配も現れるでしょう。価値観の違いはそれぞれなので、出来るだけ後悔しない結果にしたいものです。

非確定などいろいろな検査があります

NIPTは母体のリスクがない非確定的検査と、母体のリスクがある確定的検査などがあります。前者は妊婦に対して行われる超音波診断が含まれていて、超音波診断の場合は妊婦検診にも含まれているので安心・安全です。他には妊婦から採血して調べる方法があり、これは通常の採血のようなものなので安全性には問題がありません。採血は通常の一般的な健康診断でも行っていて、精度が高い新型出生前診断に適用されるようになりました。この方法は採血によって行われる非確定的検査で、安全性に問題はないです。陽性結果を確定させるため母体にリスクのある検査を受診することもあり、NIPT診断で陽性や判定保留などの結果が出たとしても、その後の検査結果において陰性になるケースもあります。確定的診断は羊水を採取する方法や絨毛を採取するやり方があり、確率は低いですが母体へのリスクが予想されます。最初はエコーや採血になるので、安心して利用することができるでしょう。

中絶可能な期間を過ぎないよう注意しましょう

基本的に中絶できるのは、妊娠21週6日までになります。NIPTを受けることができるのは妊娠10~22週で、もしこの検査で陽性の場合、羊水検査を受けてから診断が確定される仕組みです。陽性だと判明してから1週間や2週間後に羊水検査するケースもあり、結果が出るのに1週間~2週間かかるでしょう。この間も時間は過ぎて行くので、18週で出生前診断を利用するとすべての結果が提出されるのは、中絶可能な21週6日を過ぎてしまうかもしれません。例えば10週で受けた場合、診断が確定されるのは14週~18週になってしまうので後2か月しかありません。このようなことを考慮すると、NIPTを利用するならできるだけ早い時期から検討した方が良いでしょう。みんなが受診しているから利用しておこうというのではなく、どのような目的から検査を受けるのか検討し、検査の種類やリスク、陽性の結果が出た場合どうするかなどしっかり理解した上で検討することをおすすめします。パートナーや親とよく話し合ったり、双方の親の理解も必要になるかもしれません。

日本でもNIPTを受ける人が増えていますが、診断結果によって、家族間において何かしらのトラブルが起こることもあります。親から反対されたり、出産すべきか中絶すべきか葛藤する人も中にはいるでしょう。陽性結果が出ることを想定して、中絶可能な期間を過ぎないよう注意したりパートナーと話しあっておく必要があります。